陰鬱の国Dismaland
イギリス・ブリストル出身の反資本主義のグラフィティアーティスト・バンクシー。
グラフィティにとどまらず、ペインター、映画監督としても活動し、メッセージ性の強い作品をゲリラ的に発表する芸術テロを90年代から覆面で行い、ストリートの枠を超えて世界中から注目されているアーティスト。
2015年8月21日
彼のHPで突如発表されたのは、バンクシーを中心とした社会風刺的アーティスト61名によって作られた陰鬱のテーマパークDismalandが、翌日8月22日から9月27日までの期間限定で開園されるとの情報。
Dismal=陰鬱・暗いの意味があり、
コンセプトは子供向けではない、高いお金をかけなくても楽しめるテーマパーク。
この情報は、瞬く間にメディアやSNSを通して広まりDismalandの公式HPは当初サーバーダウンしてアクセスできない程の話題に。
チケットは1日4000枚限定。
オンラインチケットは販売開始から5分でソールドアウト。
当日券は1時、3時、4時に現地にて限定枚数のみの販売。
チケットは、なんと£3(約550円)とのこと。
そんな中、最終日9月27日 にDismalandに行ってきました!!
ロンドンからブリストルまで電車で約3時間、
ブリストルから最寄り駅のウェストン・スーパー・メアまで電車で約20分、
最寄り駅から海辺にあるDismalandまでは徒歩10分程。
この海辺の街はバンクシーが17歳まで毎夏訪れていた場所で、
思い入れのある場所だそう。
最寄り駅から会場までの間に早速バンクシーの作品を発見。
会場は最終日ということもあり、当日券を求める人々で長蛇の列。
列の真ん中に立って『Thanks for Banksy!』の札を下げたおじいちゃん。
Dismalandを残したいと署名を集めていました。
オンラインチケットがあったにも関わらず、1時間弱並んでの入場でした。
セキュリティのお兄さんに顔を30センチ近くまで近づけられ、
『これはお前のカバンか?本当か?』
と尋問を受けつつゲートを通過し中へ。
入り口付近でパンフレットを配っているお姉さんに睨まれつつ、
手を出すと地面に一枚落として貰えました。
その他にも、足を引きずっているスタッフ、
壁にもたれかかり頭を抱えるスタッフ。
とってもDismalなスタッフたちを見てるだけでも面白い。
観覧車やメリーゴーラウンドがあるものの、
ストップモーションムービーなどの映像を常に流している巨大スクリーンや、
塀一面に描かれたグラフィティやメッセーッジなど、
テーマパークというよりかは体験型の野外アートギャラリーに迷い込んだ雰囲気。
唯一の室内コンテナの中に入ると、
暗闇で変速に動くゴーカートに乗った死神が70’sのディスコミュージックにノって迎えてくれます。
それを見ていたベビーカーに乗った子供が号泣していました。
コンテナ内は、映像作品、ペイント、オブジェなど様々な作品で溢れていました。
全身タトゥーのプリンセス。
下半身が蛇になったミッキー。
戦車にのるクッキーモンスター。
原爆をイメージしたオブジェ。
逆さまに回転する赤ちゃん。
某インターネット会社のロゴのカラーをモチーフにしたバルーンの下には、
50個のステーキナイフが・・・
また残酷なバスと名付けられたバス型ギャラリーの中は、
イギリスでは1日1人平均300回防犯カメラに写り、歩き方や仕草も記録されている。
またスマートフォンで管理された社会で、
誰がどんなメールを送り、どんな写真を撮ったか全て管理されている、
管理されすぎた社会への皮肉なメッセージ。
中心にある城の中には、事故ったカボチャの馬車から身を投げ出し倒れるシンデレラとその写真を撮るパパラッチ。
故ダイアナ妃をモチーフにしているそう・・・
城の中に入る際に『スマイル!』といわれ、写真を撮ってもらえるが、
城を出る際に、パパラッチの横で満面の笑みで立っている自分が合成された写真が£5で購入できるシステム。
ちなみにDismalandのHPに搭載されているバンクシーのインタビューでは、
皮肉と言われるがそんなつもりはない。ディスニーを批判していない。
アナと雪の女王は素晴らしいしね、と語ってはいます。
その他、マスクをした20名程の団体が登場し、ブラジリアンサンバを演奏したりと、入場者を驚かせるエンターテイメントが満載でした。
ちなみに閉園後Dimalandで使われた資材等は、英国とフランスを結ぶトンネル付近にある難民キャンプに移され、シェルターとして再利用されるそうです。
この国境付近には、イギリス入国を望みながら難民生活を送る人々が大勢いるそう。
5週間限定のユートピアDismalandには計15万人が来場し、
皮肉にも経済効果はなんと38億6000万円!